北ア 黒部川 上ノ廊下 沢登り

◆日程:2018/8/16-20
◆形態:沢登り
◆ルート:
1日目:扇沢~黒部ダム~平の小屋(泊)
2日目:~平ノ渡~奥黒部ヒュッテ~口元のタル沢出合~(泊)
3日目:~広河原~金作谷~立石~(泊)
4日目:~薬師沢小屋~太郎小屋(泊)
5日目:~折立

◆人数:4名

報告: N山

メンバー:A原、S口、I崎、N山
行程  :

16日 扇沢発 → 黒部ダム → 平ノ小屋
17日 →奥黒部ヒュッテ→口元のタル沢→ゴルジュ出口↓
18日 → 金作谷ゴルジュ → スゴの淵 → 岩苔小谷出合
19日 → B沢出合 → 薬師沢小屋 → 太郎平小屋
20日 → 折立

日本列島が低気圧や台風に囲まれた天気図を見ながら、少し諦めムードが漂う中、高崎に集合。扇沢に向かう途中で既に強い雨がフロントガラスをたたく。扇沢の軒下で前祝い後就寝。

16日
朝、多少の晴れ間はあったがどんより曇っている。とりあえず奥黒部ヒュッテを目指して歩き始めるが、平(たいら)ノ渡しの前で降りが強くなる。
さっさと行動を打ち切り、平ノ小屋泊を決める。オーナーより熊を踏んでしまったときの対処や、黒部に住む動物、植物の食べ方など伝授を受ける。
夜、寒冷前線と台風崩れの熱帯低気圧の影響で、何度も強い降りになりこのまま敗退の覚悟をする。A原が同宿の若物を沢ナンパし会の紹介にとどまらず、次の週の沢の同行まで約束を取り付ける。

17日
朝雨が上がる。オーナーより最近降ってないから、大して増水しないよ とのお墨付きをもらい出発。奥黒部ヒュッテまで、アップダウンの道をこなす。
確かに黒部川に濁りはあるが、どうしようもない感じではない。奥黒部ヒュッテでは若旦那?には良いタイミングで来たね とさらにお墨付き。
名物じいさんに登山計画書を提出し、ついに上の廊下に入渓(入河?)。「黒部の流れは重い」という諸説通りかなり厳しい圧を受けるが、スクラム徒渉で次々と徒渉をこなす。女性陣のバランスが素晴らしい。これと比べて男二人は足取りが怪しい。徒渉できずに敗退を決めるパーティが多いとのこと、あまり背丈の無い我々が渡れるということは確かにそれほど増水していないのかもしれない。乾ききった黒部は一度の大雨位は呑み込んでしまうのだろう。

下の黒ビンガの入口に泳ぎポイント。泳いでみると確かに強く流され、ここで敗退するパーティがあるというHさん情報(前週に遡行 以下、ホリホリメモ)もうなずける。

そのあとの口元のタルゴルジュは、ゴルジュ奥の2m滝が轟轟と音を立てている。他会の報告に真ん中の岩でビレーしている姿や左岸の水流を強引に進む写真があったが、絶対にありえない。途中まで左岸をへつろうとしたが押し戻される。
左岸の壁に弱点があるとのホリホリメモより左岸の壁をトラバースすると確かに滝の手前まで行けた。
スロープ状の岩上で後続を引っ張るが、踏ん張りがきかず、おまけに足がツッてI崎を確保のとき力付きそうになる。
ここからバンドを上流側にロープを伸ばし、先人が打ったよく効いたハーケンに一本打ち足して、6mほどの懸垂で白く泡立った流水の中の岩に降り立つ。
そのまま少し振り子してとりあえず核心部は抜けたと思っていた。ところがその先にも課題が設定されており、右岸沿いを詰めていくと激しい流れの中をパスする場所が出てきた。
またその直後一発勝負で二条の流心の間の岩にしがみつくところがあり、実は今回の山行で一番アドレナリンが吹き出た場所だったりする。

のちに右岸に極上物件があり迷わずそこにタープを張る。岩魚をA原、N山で一匹づつ釣り上げ、黒部川のご相伴にあずかる。二本のビールを4人で分け合いとりあえず乾杯。わさびマヨを駆使したつまみ、多めのご飯もすっかり平らげる。一番のヤマ場を超えてこれは最後まで行ける という自信をみんなが持った感じで酒も進んだ。

18日
朝、今日も天気がよい。I崎の定点観測によると6㎝程水位がさがったとのこと。冷え切った服に着替えて出発。何度か徒渉が出てくるがそれほどきつくはない。広河原では横一列で歩ける。川幅も拡がるので徒渉も楽だ。お日様の下ポクポクと歩をすすめる。

上の黒ビンガが出現すると川幅が狭まるが難儀するところはない。黒ビンガの前でなぜかコマネチ!のポーズで写真を撮る。理由は書面ではとても書けない。
左岸から何本も美しい滝が流れ込む。金作谷が合流すると金作谷出合先のゴルジュとなる。ここでなんと4人パーティが上流から流れながら降りてくる。黒部川下りとのこと。「こっから先はきついよ」とのコメントもらう。しかしこのころになるとチームとしての力、知恵がついてきており、それほど苦労なく第二の核心金作谷出合先のゴルジュは抜けることができた。

ホッとしたところでN山にミスが出る。流心を飛び越えて着地しようとしたが、水が綺麗なだけに深さの目測を誤り足を延ばした状態で着地してしまう。浅瀬にもんどりうって倒れ込む。
着地の瞬間、ピキッという感覚がありヘリで運ばれる自分の姿が頭をよぎる。なんとか振り子徒渉で全員渡り切り少し休むが、膝を伸ばしたときと、曲げ切ったときに痛い。
なんとか歩くが、これ以降はI崎に先行してもらいつつ、リードに関して、泳ぎ、徒渉系はS口、トラバース系はA原にお願いする。

スゴの淵は左岸をトラバースしたが、A原がトップで抜けて、S口がラストを振り子と懸垂を使ってフォローする。しばらく徒渉を繰り返し、岩苔小谷の出合いでタープを張る。時間はまだ余裕があるが、N山が遅れ出したのでここまで。装備を乾かしてゆっくりと過ごす。夕食のガパオライスはとてもうまかった。今後自分が食当のときには採用したいメニューだ。
夜、寒くてなんども目が覚める。たきびを点火してタバコを吸っているとI崎も寒くて起きてくる。たきびの炎を眺めながらまったりとした時を過ごす。

19日
朝、今日も天気が良い。N山の共同装備を全員で分けてパッキング。イエロージャージならぬイエローロープ(フローティング)はS口に任せる。
一番でプールが出てくるがとても水に入る気が起きずヘツリや小さな巻きなどで入水を避けて進む。立石奇岩でお決まりのポーズで記念撮影。見る角度によって人が立小便しているよにも、手を合わせて祈っているようにも見える。ただ崩壊が激しいので、崩れてしまう日もそんなに遠くないだろう。

その先左右から谷が合流して水量がだんだんと少なくなっていく。途中日があたるようになってから、深いエメラルドグリーンの淵で泳いだり、水中メガネでのぞき込んだりして遊ぶ。
谷が西に向くとしばらくしてB沢で大東新道が合流し、向かい側を登山者が歩いているのが確認できる。既存の支点で懸垂10mで川床に降り立つ。

ここからもS口が沢沿いを行きたがっていたが、体力温存で登山道に上がる。とはいえ河原の岩に登山道であること示しただけの道が半分以上。薬師沢小屋の赤い釣り橋が見えて、橋を渡らずにわざと最後の徒渉をして廊下は終了した。

ビールとカップラーメンで乾杯。ここから太郎平まで上がるが、かなり地獄モードであった。N山は右足を構ったため左足がシビれて遅れに遅れる。A原が荷物持ちに空身でもどってきてくれる。太郎平小屋は大盛況で、なかでも中学生の清掃登山の一行はなかなか騒がしかったが、負けずとおばさんおっさんの我々もビールを飲みながら少し(いや相当)迷惑な客に
なった。小屋前のベンチでI崎、S口、A原が横一列にならんで、中学生を観察しながら毒を吐くのが最高に面白く腹が痛くなった。そのくせI崎は一番毒を吐いていた女の子に どこから来たの とか 明日はどこに行くの と声をかけ、変なおじさんモードで攻めていた。笑い過ぎて腹筋が崩壊した。

20日
太郎平からの下り、またN山の共同装備はすべて他のメンバーに分配して、なんとか老人のコースタイム位で下れた。途中で携帯が入るようになるので、温泉立ち寄りがセットになった富山地鉄タクシーを予約。富山駅では魚介類の店とタクシーの運転手さんお勧めの回転すしで打ち上げた。

結びと顛末
N山は涙腺が弱いほうで、沢登りで稜線に出て握手をすると目頭が熱くなったりすのですが、今回は完全崩壊でした。ケガした情けなさもありますが、チームとして上の目標をこなすために練習して、そして達成した喜びは格別で黒部の水を少ししょっぱくしたのでした。
跳んで泳ぐだけのリーダで、さらに最後はお荷物になりましたが各々の足りない点を補いあえる、正確には補い合えるようになったメンバーだったと思います。
それからホリホリ(前週にカミロウ遡行)からの情報提供、柿其川の訓練山行企画のT野さん、参加のT中Mさんありがとうございました。おかげさまでかなりカミロウリアルシミュレーションができました。
。訓練、計画に当たっては、前年リーダのY井さんの方法を真似しました。感謝です。

下山翌日、近所の接骨院でレントゲンを撮ったところ、右脛骨内顆骨折(みぎけいこつないかこっせつ)とのこと。負荷かけると崩れて手術が必要になるとのことで、翌日から松葉杖です。でも納得してます。
1日目の核心部で5mの高さから飛び込むことで、流心をパスすることを一瞬考えましたが、この山行で何が重要かを考え踏みとどまりました。飛び込むことに恐怖心はありませんでしたが、もしかするとそこで失敗していたら、足の骨が砕けてアウトになっていたのではと考えるのです。
またその直後、流されたら危険なところで、ビレー者も確実に飛ばされると思いロープを付けないで飛び込みましたが、あらゆる手段を考えた上で少しでも安全な方法を考えるべきであったと反省しています。今回の骨折はなにか自分の傲りのようなものに対する警告だったのだと思います。それとは別にS沢さんの言葉を思い出します。
「山では難しいところでは事故は起きない。気を抜いた時に起こることがほとんどだよ」 いまさらながら噛みしめました。

カミロウ報告アルバム入り

最初から渡渉

口元のタル沢の先のゴルジュ

かなりヤバいヘツリ

たき火サイコー!

上の黒ビンガー!

テンションMAX!

泳ぎも多し

淵がキレイすぎて泳ぐ

ゴール!!

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